妊娠すると一番気になるのが「胎児に悪影響を与えること」ではないでしょうか。特にインフルエンザは毎年流行するため、気を付けていても罹ってしまうこともあります。
そんなインフルエンザに罹らないように、罹っても重篤化しないように予防接種を打たれる方も多いでしょう。
しかし妊娠中に服用すると胎児に悪影響を与える薬も存在します。そのため「妊娠中でも予防接種はできるの?」と心配される方も多いかもしれません。
そこで今回は妊娠中の予防接種について詳しくご紹介します。
妊婦はインフルエンザの予防接種を受けられる?
妊婦でも大丈夫
結論からお伝えしますと、妊娠中でもインフルエンザの予防接種はできます。これまで多くの妊婦さんが予防接種をしていますが、胎児に悪影響を及ぼしたという報告はないようです。
そのため毎年インフルエンザのシーズンになると、日本産婦人科学会などではインフルエンザ予防接種を受けるように推進しています。
いつなら安全に予防接種できる?
月齢によって胎児は、どんどん成長します。悪阻など妊婦さんの体調も胎児の月齢によって大きく変化します。そのため「インフルエンザの予防接種ができる月齢は何時だろう?」と気になる方も多いと思います。
ですがインフルエンザの予防接種は胎児に悪影響を与えないと考えられています。そのため妊娠中の全ての時期において接種しても安全です。
予防接種はいつ受けるのがベスト?
どうせ痛い思いをして注射を受けるならば、できるだけ予防接種の効果を上げたいですよね。予防接種を受けるベストなタイミングについてご紹介します。
インフルエンザワクチンは「打ったら直ぐに効果がある」というわけではありません。
- 効果が出るまで約2~3週間
- 約3~4ヶ月の間効果が持続
- インフルエンザの流行期間は11月頃~4月頃
上記の3点をふまえると、10~11月頃に接種するのが理想です。理論的には2回接種すると確実かもしれませんが、保存剤が入っていないワクチンを接種することができる回数は1回。11月後半からしか受けることができません。
予防接種が胎児に与える影響は?
「葉酸の摂取やバランスのよい食事を心がけるように」
「妊娠中はアルコール、タバコ、カフェインなどの摂取は避けた方がいい」
このように指導されたと思います。これは母親が摂取するものが胎盤を通じて、胎児に影響を与えるからです。
そのため「予防接種は胎児に影響を与えないの?」と心配される方も多いでしょう。ここでは予防接種が胎児に与える影響についてご紹介します。
予防接種は胎児にとってもメリットあり?
予防接種を受けることで、母体ではインフルエンザに対する抗体を獲得することができます。この抗体は、胎盤を通して母体の免疫が胎児に移行するようです。
そのため胎児に感染防御力を与えることも期待されています。一説には満期妊娠を成功させる可能性をアップさせる傾向にもあるのだとか。
インフルエンザの予防接種はなぜ安全なの?
日本で使用されているインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンです。不活化ワクチンとは、病原性をなくしたワクチンのことを指します。
そのため注射をしても胎児には、悪影響を与えないのです。これまで予防接種を受けたことで、流産や奇形の危険性が高まるといった研究結果も出ていません。
インフル予防接種は「保存剤なし」がおすすめ
インフルエンザのワクチンには実はいくつかの種類が存在するのです。大きく分けると、保存剤が入っているものと入っていないもの。保存剤が与える影響について2点ご紹介します。
チメロサール
エチル水銀に由来する防腐剤です。過去には発達障害との関係性を指摘されたこともありますが、最近の疫学研究ではその可能性は否定されています。
フェノキシエタノール
こちらは胎児に影響を与えるというような研究結果はでていません。ただ妊婦への使用実績は確認されていないようです。
保存剤が入っていることにより即悪影響がでるわけではありません。しかし妊娠している時は保存剤が入っていないものを摂取する方が安心かもしれませんね。
予防接種による副反応の可能性は?
インフルエンザ予防接種を行うことで、副反応やアレルギー反応が起こることもあります。ただ妊娠していることで、副反応の発生率があがるという関係性はないようです。
しかし過去に予防接種などでアレルギー反応が出たことがある方は、妊娠中の予防接種はおすすめしません。
予防接種を受ける必要性は?
予防接種を受ければ必ずインフルエンザにならないというわけではありません。そのため「予防接種を受けなくてもいいのでは?」と考えられている方もいるでしょう。
ここでは何故、妊娠中に予防接種を受けた方がいいのかを紹介します。
インフルエンザの脅威
インフルエンザの一番の脅威は、その“感染力”です。毎年、約1千万人がインフルエンザに感染しているといわれています。約10人に1人の割合とかなり高い確率ですね。
健康に注意して生活していてもインフルエンザにかかってしまう可能性があります。そのため妊娠中は本人だけでなく、パートナーなど同居する家族にも予防接種を受けてもらいましょう。
妊婦は重症化する危険性も
一般的にはインフルエンザは1週間ほどで治る病気です。しかし妊娠中は免疫力が落ちてしまいます。そのためインフルエンザになると治りにくいだけでなく、使える薬に制限があります。
結果、重症化しやすく肺炎になることも。2009年に新型インフルエンザが流行した際、諸外国では妊婦の死亡が多数報告されました。また重篤化し入院した妊婦は、早産率が高くなったようです。
しかし日本では妊婦の死亡例は報告されていません。これは日本産婦人科学会がインフルエンザの情報をインターネットで提供し、予防接種の呼びかけを迅速に行った功績によるものといわれています。
妊婦がインフルエンザに罹ったら?
予防していてもインフルエンザらしき症状が出た場合、迅速に地域の一般病院を受診しましょう。いつも通っている産婦人科は避けて下さい。他の妊婦さんへうつしてしまう恐れがあるからです。
症状が出てから48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、重症化を防げるとされています。「妊娠中にインフルエンザ薬を飲んでも大丈夫?」と心配されるかもしれません。
2009年の新型インフルエンザ大流行の際、推定4万人の妊婦が抗インフルエンザ薬を服用していますが、胎児に問題があったという報告はなかったようです。
予防接種はどこで受けられる?
予防接種を受ける際に一番怖いのが、「病院に行くこと」ではないでしょうか。病院の待合室で長時間待つ間、「他の人の病気をもらってしまった」という可能性もあります。
インフルエンザの予防をするために病院に行ったのに、これでは本末転倒ですよね。そこで妊婦さんにおすすめの予防接種の受け方をご紹介します。
予防接種は産婦人科がおすすめ
一番おすすめなのがいつも通っている産婦人科で予防接種を受けることです。産婦人科によっては、インフルエンザシーズンの始まりとなる11月後半には案内が配布されることもあります。
事前に予約しておけば健診のついでに予防接種を簡単に済ませることもできます。一度、かかりつけの産婦人科で相談してみてください。
予防接種外来のある診療所
診療所によっては予防接種だけを行う時間帯を設けていることもあります。この時間帯は予防接種を受けられる「健康な人」しか診療所を訪れません。
そのため感染を恐れずに、安心して予防接種を受けることができます。あくまで診療所ごとのサービスになりますので、事前に問い合わせてください。
ただ保存剤が入っていないワクチンは、妊娠している人が優先して選択できるように産婦人科にしか配分されていません。一般の診療所で予防接種を受ける際は注意が必要です。
まとめ
今回ご紹介したように妊娠中でもインフルエンザの予防接種を受けることができます。
安心して妊娠ライフを過ごすためには、接種することを推奨している傾向にも。
ぜひ健診を受けている産婦人科で相談してみてください。