不妊治療は医療費控除の対象?不妊治療の方法と費用を確認しよう

自然に妊娠・出産することが難しい人にとって、頼みの綱である不妊治療。不妊に悩むカップルの増加に伴い、不妊治療を受ける人の数も増えています。

しかし、体外受精や顕微授精などの高度な不妊治療は保険適用外のため、莫大な療費がかかるのも現実です。ここでは、不妊治療の方法や費用、医療費控除の申請方法などを詳しく解説します。

まず不妊の定義とは?

一年間性生活を行っているにも関わらず妊娠しない状態のことを「不妊」といいます。一般的に、子供を望む健康な男女が避妊をせずに性生活を行った場合、半年で7割、一年で9割、二年で10割が妊娠成立するとされていますが、あくまでデータ上の話です。

不妊に悩むカップルは増加している

近年は、晩婚化晩産化の影響もあり、不妊に悩むカップルは右肩上がりに増えています。ある調査では、5組に1組のカップルが不妊に悩んでいるという報告もあります。そして不妊率の上昇に伴い、体外受精などの生殖医療を受ける人も大幅に増えています。

不妊の原因は女性だけではない

ひと昔前までは、不妊の原因は100%女性側にあると考えられてきました。そのため、なかなか子供ができないことを周囲から攻められたり、自分の体に問題があると悩んだりして、辛い思いをする女性も少なくありませんでした。

しかし最近は、不妊に悩むカップルの約半数は男性側に原因があるということが分かってきています。これまで女性が一人で抱え込みがちだった不妊問題が、夫婦二人の問題という認識に変わりつつあるのです。

主な不妊治療の方法

病院やクリニックで行われている不妊治療には、主に3つの種類があります。どの治療方法を選択するかは、不妊の原因や程度によって異なります。

タイミング法

不妊治療を始めた人の多くが最初に行うのがタイミング法です。タイミング法とは、妊娠しやすいとされる排卵2日前から排卵日までのタイミングに合わせ性交を行う治療法です。

超音波検査や尿中の排卵ホルモンを測定する検査で排卵日を正確に割り出し、医師の指示のもと性交を行います。体に負担が少なく、自然に近い形で妊娠することができます。タイミング法には保険が適用されるため、一回の治療にかかる費用は数千円程度と比較的安価です。

排卵誘発法

排卵誘発法とは、薬を使って卵巣を刺激し人工的に排卵を起こさせる治療法です。排卵障害の人や、排卵障害はないがタイミング法では妊娠しない人、人工授精を行う人、生殖補助医療で採卵を行う人などに用いられます。

排卵誘発法に使われる薬剤は複数の種類があり、比較的軽度~中等度の不妊にはクロミフェンやシクロフェニル、生殖補助医療が必要な不妊にはゴナドトロピン製剤といった薬が使われます。

排卵誘発法も、一部の薬剤を除き基本的には保険適用のため、一回の治療にかかる費用は数百円~数千円程度です。

人工授精

人工授精は、状態の良い精子を選別し、人工的に子宮に注入する治療法です。乏精子症、精子無力症、精子頸管粘液不適合、抗精子抗体保有症例、性交障害(EDなど)、そして原因不明の不妊などが適応となります。

基礎体温の計測や超音波検査、尿中の排卵ホルモン測定などにより排卵日を割り出し、排卵のタイミングに合わせて精子を注入します。自然な排卵に合わせて行うケースもあれば、前述の排卵誘発法と併せて行うケースもあります。

人工授精を6回程度行っても妊娠成立しない場合は、体外受精や顕微授精へのステップアップを考える必要があります。人工授精は保険適用ではないため、一回の治療で1~2万円程度の費用がかかります。

そのほかの不妊治療の方法

上記にご紹介した治療法では妊娠が難しい場合に、体外受精や顕微授精の生殖補助医療と呼ばれる治療法が行われます。

体外受精では、採卵した卵子を培養液に入れ、そこに精子浮遊液を加えて受精させ、受精卵を子宮に移植します。一方、顕微授精ではガラス針の先端に一個の精子を入れ、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入します。

体外受精・顕微授精も保険適用ではないため、一回の治療で20万~60万円程度の費用がかかります。

不妊治療をして出産できる確率は?

不妊治療をしたからといって、必ずしも妊娠・出産できるわけではありません。1回の不妊治療で出産できる確率は、30歳で約20%、35歳で約15%、40歳で約8%、そして45歳では0.6%程度とされています。

不妊治療も自然妊娠同様に、年齢が上がるにつれて妊娠率は下がるというのが現実です。また、高齢になるにつれ、体外受精や顕微授精といった高度な生殖補助医療が必要になるケースも増えます。

体外受精や顕微授精は身体的・経済的にも負担の大きい治療法であるため、そういった理由で治療を諦める人も少なくありません。

不妊治療は医療費控除の対象になる?

人工授精、体外受精、顕微授精といった高度な不妊治療は保険適用外のため、治療には莫大な費用がかかります。ですが、医療費控除の制度を使えば、負担を軽減することが可能です。

医療費控除を受けるための条件

不妊治療の医療費控除を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

  1. 不妊治療費を含め、その年の1月1日~12月31日までに支払った医療費である
  2. 申告者は納税者である
  3. 医療費総額から不妊治療助成金を差し引いた金額が10万円以上である

これらの条件を満たしていれば、医療費控除を受けることが可能です。なお、医療費控除の申請には、確定申告書医療費控除明細書ないしは加入している健康保険組合から発行された医療費通知給与所得の源泉徴収票が必要となります。

不妊治療を受けている人や、これから受けようと考えている人は、申請の際に困らないようそれらの書類をきちんと保管しておきましょう。

還付申告は5年前までさかのぼることが可能

医療費控除は、払いすぎた所得税を取り戻すための「還付申告」にあたります。還付申告は一年中行うことができ、また、5年前までさかのぼることが可能です。つまり、5年前に受けた不妊治療の費用であっても申告を行えば控除を受けられます

申告書はパソコンを使って自宅で作成することができます。また、税務署に直接足を運ばなくても郵送で手続きを行えるので、忙しくてなかなか時間が取れない人でも、空いた時間に作業ができるのが利点です。

方法が分からないという人は、税務署に直接問い合わせてみると良いでしょう。ただし、2月・3月は確定申告で混み合うため、可能であれば時期をずらすことをおすすめします。

医療費控除の対象になる治療とは?

不妊治療にかかる費用の内、医療費控除の対象になるのは次のような治療です。

  • 人工授精、体外受精、顕微授精の費用
  • 医師から処方された薬の費用
  • タイミング法などで排卵の状態を確認するための通院費用
  • 病院に通うための交通費
  • 不妊治療のための漢方薬(医薬品に定義されるもの)の購入費
  • 不妊治療のためのマッサージ指圧師、鍼師、柔道整復師の通院費用

このように、保険適用外の治療にかかる費用であっても、医療費控除の対象になります。申請できるものを把握してしっかり手続きを行えば、不妊治療の費用負担を軽減することが可能です。

まとめ

不妊治療は、高度なものになればなるほど多額の費用がかかりますが、医療費控除の制度を使えば費用の一部を取り戻すことが可能です。不妊治療を経て妊娠・出産に至るまでには数回~数十回の治療を必要とするケースもあります。

費用の負担を少しでも軽くするためにも、医療費控除の申請をしっかり行うことをおすすめします。