妊娠糖尿病とは何?原因・症状・検査・治療法について専門家が徹底解説

  • 2020年7月14日
  • 2020年12月6日
  • 妊娠

妊娠中は健康状態について様々な不安がありますよね。妊娠糖尿病について耳にしたけれど、知識がなくて心配という方も多いのではないでしょうか。

妊婦さんの健康状態は、赤ちゃんの体に直結するので、妊娠中は体調に気を配る必要があります。特に妊娠糖尿病は自覚症状が少なく、放置されがちなので注意が必要です。

そこで今回は、妊娠糖尿病について詳しくご紹介します。

妊娠糖尿病とは何?

妊娠糖尿病は、妊娠中に気をつけるべき病気の一つです。妊娠中発症した場合、早めに気づくことが大切です。妊娠糖尿病を発症した際に対処できるよう、妊娠糖尿病とは何か、妊娠糖尿病の原因や症状についてご説明します。妊娠糖尿病について気になる方は確認してみてください。

妊娠糖尿病と普通の糖尿病の違い

「妊娠糖尿病」という言葉を聞いたことのある方がいるのではないでしょうか。普通の糖尿病との違い気になりますよね。「妊娠糖尿病」とは、妊娠する前と出産後は糖尿病ではないにも関わらず、妊娠中に糖尿病のような状態になることです。妊娠中だけという条件がついている点が普通の糖尿病とは異なります。

妊娠糖尿病の原因

基本的に、哺乳類は妊娠中血糖値が上がりやすくなります。胎児に栄養を与えなければならないという本能により、血糖値を高めようとする機能が働くのです。この機能は人間でも同じです。

この機能が過剰になると、食後の血糖値が上がりすぎたり、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用が低下したりします。これが妊娠糖尿病の原因です。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病は初めのうちはほとんど自覚症状がありません。そのため、気づかずに放置してしまうケースが多いです。妊娠糖尿病が進行すると、のどが乾きすぎる、尿量が増えるなどの症状が出てきます。これは、普通の糖尿病の自覚症状と同じです。

妊娠糖尿病の検査

妊娠糖尿病は自覚症状がほとんどないため、妊娠中は検査を受けることが大切です。妊婦検診で血糖値に異常が生じた場合は、妊娠糖尿病に関する詳しい検査を受けます。

それが「経口ブドウ糖負荷試験」です。具体的な方法としては、ブドウ糖を75g溶解した液体を飲み、血糖値の変化を調べます。妊娠糖尿病の診断基準は以下のようになっています。

  • 空腹時の血糖値:92mg/dL以上
  • 経口ブドウ糖負荷試験1時間後の血糖値:180mg/dL以上
  • 経口ブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値:153mg/dL以上

普通の糖尿病よりも数値が厳しいのが特徴です。この診断基準のいずれか1つでも当てはまる場合は治療開始が必要となります。

(引用: 妊娠糖尿病Q&A)

妊娠糖尿病が及ぼす影響とは?

妊娠糖尿病になると、妊婦、胎児ともに影響があります。妊娠糖尿病になることで、正常に妊娠できない可能性がありますし、妊婦、胎児ともに危険な状態になるケースもあります。妊娠糖尿病が及ぼす影響をご説明します。正しい知識を持っておくことが大切です。

妊娠糖尿病による妊婦への影響

妊娠糖尿病の妊婦さんは、妊娠高血圧症候群になるリスクが高まります。重症の場合、けいれん発作を生ずるケースがあります。羊水過多になり、早産や早期破水、流産のリスクも上がります。

また、尿から糖が出ることで妊娠中に尿路感染症になり、早産や早期破水につながることがあるのです。そして、妊娠糖尿病は出産後も改善せず、糖尿病へ移行するリスクも高いので注意が必要です。

妊娠糖尿病による胎児への影響

妊婦さんが妊娠糖尿病にかかると、胎児に糖などの栄養分が行き渡りすぎてしまいます。すると、胎児の体からは血糖値を下げようと、過剰のインスリンが分泌されます。

しかし、インスリンには、血糖値を下げる作用のみならず、成長ホルモンとしての働きがあるのです。インスリンが過剰に分泌されると脂肪が増えすぎたり、体の臓器が大きくなりすぎたりします。その結果出生時の体重が4000g以上という巨大児になる可能性があります。

巨大児を分娩する際、胎児が産道でつかえて順調に出産できなくなるリスクがあります。分娩障害は、胎児の神経麻痺や機能不全の原因となります。また、流産、先天奇形や心臓病のリスクが高まり、ひどい場合は胎児が死亡する可能性があるのです。

治療方法

実際に妊娠糖尿病と診断された場合どのような治療を行なっていくものでしょうか。ここでは妊娠糖尿病における治療法についてご紹介していきます。

食事療法

  • バランス用食べよう!

食事は、主食(ご飯・パン・麺)、主菜(肉・魚・卵・大豆製品)、副菜(野菜、きのこ、海藻類)を毎食揃えてバランス良く食べましょう。主食はなるべく血糖値が上がりやすい小麦よりご飯を食べると◎です!

  • 肉、魚、卵、大豆製品はまんべんなく!

主菜は偏りなく、肉、魚、卵、大豆製品を組み合わせて食べましょう!お肉は脂身の少ない部分を選ぶようにすると体重増加の防止にもなります。(ヒレ、モモ、ささみがオススメ)

  •  野菜はモリモリ食べましょう!

野菜、きのこ、こんにゃく、海藻類など、食物繊維の多い食材を取り入れましょう。野菜は特に制限がありません。お腹がすいた時はお野菜を食べるといいですね。1日の目安は、両手を広げて器を作った大きさいっぱい!その中で1/3は緑黄色野菜を食べましょう

  • 果物の過剰摂取は禁物!

果物は糖分が多い食べ物です。血糖値を急激に上げる食べ物のため、血糖コントロールが必要な方は極力控えましょう

  • 塩分に注意!薄味を意識

漬物、佃煮、加工食品、練り製品、インスタント食品、レトルト食品は塩分がたくさん含まれています。味が濃いものはついつい食べ過ぎてしまう…なんて事がありますよね。お酢や香辛料、香味食材を活かし薄味を心がけましょう!

  • お菓子やジュースの食べ過ぎに注意!

お菓子は体重増加や血糖コントロールを不良にします。出来るだけ食べないようにしましょう。もし、我慢できない時は、糖質の少ない物を選ぶといいでしょう。ビターチョコレート、糖類0の物をチョイスしてみてください。

主治医や管理栄養士と相談しながら食べましょう。野菜ジュースには、果物が入っていて糖分が多い場合があります。ビタミン・ミネラル補給だと言って飲む方が多いですが、加工されたものにはほとんど栄養は含まれていません。出来るだけ生の食材そのものから食べましょう。

運動療法

妊娠中の運動は筋力アップだけでなく、血糖コントロールの改善効果が期待できます。状態により、できない場合があるので主治医に確認しながらおこないましょう!

  • 基礎代謝アップ
  • インスリンの働いを良くする
  • 筋肉量のアップ、運動不足解消
  • 体重コントロールがしやすくなる
  • 腰痛、肩こりの解消

薬物療法

内服薬は、胎盤を通り胎児に移行するため、胎児の低血糖リスクがあります。そのため、インスリン注射を用いて血糖コントロールする場合ががほとんどです。インスリン注射は、胎児に影響なく、母体だけ血糖コントロールを行うことができます

出産後に気をつけること

妊娠糖尿病になった場合は、出産後に治っているかを確認する必要があります。検査としては、産後6~12週間後に経口ブドウ糖負荷試験を受けます。出産後妊娠糖尿病が治っていたとしても、妊娠糖尿病になった場合は、将来糖尿病になる確率が約7倍に高まると言われています。定期的に検査を受けることが大切です。

赤ちゃんを母乳で育てることで、将来赤ちゃんもお母さんも糖尿病になるリスクが下がると考えられています。可能な限り母乳で育てるようにしましょう。

妊娠糖尿病の対処法を知り元気な胎児を出産しよう

妊娠糖尿病になると、妊娠中に赤ちゃんやお母さんに様々な合併症を引き起こすことにつながります。また、妊娠中のみならず、将来赤ちゃんやお母さんが糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高まります。

元気な赤ちゃんを出産するためにも、将来健康な状態を維持するためにも、妊娠糖尿病に対する正しい知識を持っておくことが大切です。
妊娠中は定期的に検査を受け、専門家の指導の元、生活習慣に注意するようにしましょう。