子宮頸癌の基礎知識!73人に1人がかかる子宮頸癌の症状や治療法とは?

昨日まで健康だと思っていたのに、ある日突然「子宮頚癌」を宣告されたら?誰にでも起こりうるとわかっていても

  • そもそも病気についてよくわからない
  • 婦人科検診には、抵抗を感じる
  • まさか自分は、大丈夫だろう

と、ついつい目を背けてしまいがちですよね。

そこでこの記事では、実はよくわからない子宮頚癌という病気について優しく簡単に解説し、早期発見のためにどんなことをすべきかのお悩みの方に、高度異形成の治療経験者の観点からお答えします!

子宮頚癌の基礎知識

子宮頸癌は、その名前からも女性特有の癌であることは言うまでもありません。

  • 子宮におけるどこの部位の癌で
  • 何が原因となってかかってしまうのか
  • どの程度一般的な病気でなのか

これらの知識は、義務教育で教えられる範囲ではありませんが、女性として知っておくべきことです。簡単にまとめてみましたので、ぜひご一読ください。

そもそも体のどこのガン?

子宮頚癌は「子宮頸部(しきゅうけいぶ)にできる癌」なのですが、実は子宮のどの部位か分からない人は意外に多いのではないでしょうか。

子宮頸部は、簡単に言えば「子宮の入り口の部分」です。 ご存知の通り、子宮は女性の骨盤に囲まれている臓器で、成人女性で鶏の卵程度の大きさがあります。

下部の筒状の「子宮頸部(けいぶ)」と、上部の袋状の「子宮体部(たいぶ)」に分けられ、子宮頸部の下は腟(ちつ)につながっています。

すなわち、子宮頸癌は「子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分から発生する癌」なのです。

何が原因で発症してしまうのか

子宮頸癌の発生原因の多くには、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)への感染が関連しているとされ、性交渉で感染することが知られています。

こんなことを言われるとパートナーとは大丈夫かな、と不安になってしまうかもしれませんが、このウイルスは意外と身近に存在しているもの。多くの場合、感染しても免疫によって排除されるため発症に至らないことは多いのです。

しかし、HPVを自身の免疫で排除できず感染が続いてしまった場合、その中のごく一部に子宮頸癌の前段階の病変や子宮頸癌が発生すると考えられています。また、喫煙によって子宮頸癌発生のリスクが高まるとも言われています。

子宮頸癌は、正常な状態から癌になる前の状態を何年か経てから発症に至ります。癌の前段階では症状がありません。

子宮頸癌が進行すると、不正出血や濃い茶色や膿(うみ)のようなおりものが増えたり、水っぽいおりものや粘液が多く出てくることがあります。

さらに進行すると下腹部や腰の痛みや血尿・血便も伴います。少しでも気になる症状があるときは、すぐ婦人科を受診しましょう。

実際、どれくらいの患者さんがいるの?

いざ診断されると「自分だけ?」と不安になるかもしれません。しかし、子宮頸癌は日本全国で1年間に約11,000人が診断されている病気で、厚生労働省の調査では、女性は一生のうちにおよそ73人に1人が子宮頸癌と診断されています。

1クラス40人の女子校であれば、2クラスに1人以上は発症していることになります。前段階の病変も含めれば、もっと多いことは言うまでもありません。

筆者も子宮頚がんを診断された一人なのですが、診断を受けた際は不安な気持ちになり友達に相談しました。すると予想に反して友達や友達の家族に同じような経験をした人が複数人いたのです。

自分だけではない、と気付けるだけでなく、経験者に不安に思うところを質問することができて、とても安心しました。

もしもあなたが診断を受け、同じように不安を感じたら、抱え込まずに信頼できる友達に相談することをお勧めします。実際の経験談やアドバイスを聞くことができるかもしれませんよ。

子宮頚癌の治療

子宮頸癌を含め、癌はそれぞれの患者さんによって、有効な治療が異なることが珍しくありません。そのため、大前提は「自分の体と病気の進行を考慮して、担当医と相談しながら治療法を組んでいく」ことになります。

これから記載する他にも、治療法は存在しますが、参考として代表的なものを知っておくことで、担当医の方とスムーズに相談できるかと思います。

自分自身の治療について理解を深めておくことは、病気と付き合っていく上で大切なことです。

ステージに応じた治療法

その他の癌と同様に、治療方法は癌の進行程度(病期(ステージ))や体のコンディションなどから決定します。

子宮頚癌の病期は、早期から進行するにつれて大きく分けると以下のようにI期〜IV期に分類されます。実際には各ステージの中も、さらに数段階に分かれているのです。

それでは、次に進行程度に合わせた治療内容を見ていきましょう。

  • 癌になる前の病変の治療

子宮頸癌では、前癌病変と呼ばれる癌になる前の状態でも治療を行う必要があり、この状態を異形成と呼びます。

異形成(細胞の変異)の状態は3段階に分かれており、病状の軽いものから「軽度異形成」「中度異形成」「高度異形成」と呼ばれます。

I期癌が子宮のみに認められる
Ⅱ期癌が膣または子宮の周りの組織に渡っているが、あまり進行していない
Ⅲ期癌が膣または子宮の周りの組織に渡っていて、かなり進行している
Ⅳ期癌が膀胱、直腸にも進行しているか、離れたところに転移している

中度までの場合は、その後の免疫力によって回復する(細胞が正常な状態に戻る)可能性があるため経過観察をしていく場合が多いですが、高度異形成となると、通常癌へと進行していくため、手術で該当箇所を切除することが一般的です。(原則的なもので、他の治療法も存在します)

  • 癌の治療

子宮頸癌の治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法があり、それぞれの治療法は単独で行われるばかりでなく、組み合わせて行われることもあります。

I期手術、放射線治療
Ⅱ期手術、放射線治療
Ⅲ期放射線療法
Ⅳ期放射線療法、薬物療法

下の表は、治療法をまとめたものですが、あくまでも原則的なもので簡易的に記載しています。実際には、合併症の有無や妊娠の希望などによっては担当の医師と相談しながら、別の治療法を選択することもあります

手術・放射線治療・薬物療法

ここでは、主要な治療方法について簡単にご説明していきます。

  • 手術

Ⅰ〜II期の子宮頸癌に対する有効な治療法とされています。癌の広がり度合いに応じて、子宮頸部(けいぶ)または子宮全部を切除します(卵巣と卵管は、年齢や状況に合わせて切除の必要性を決めます)。

切り取った組織は顕微鏡で詳しく調べて(病理検査)、癌が実際どの程度進行しているのかを確認の上、今後の治療方針を決めます

  • 放射線治療

放射線治療は、細胞内のDNAを直接傷つける放射線を癌に照射して治療する方法で、広範囲のステージで選択される治療法で、今では放射線治療を選択する人も少しずつ増加しています。他の治療法を組み合わせたり、術後に行うこともあります。

  • 薬物療法

薬物療法は、主にステージの進行した癌や再発した場合に選択されます。基本的には、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を保ち生存期間を延ばすことが治療の目標となります。抗癌剤治療は、ここに分類されます。

早期発見のために

子宮頚癌と診断されるのは、20歳代後半から増加傾向となり、40歳代でピークを迎えるという若い世代の方でもかかりやすい癌だと言われています。

一方で、一定の時間をかけてゆっくりと異形成細胞が増殖したのちに発症しますので、若いうちから定期的に健康を管理する習慣をもてば、誰でも早期発見が可能なのです。

とにかくすべきは「定期的な検診」

子宮頸癌は子宮の入り口付近に発生することが多いので、婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすい癌です。定期的に検診を受ければ、癌になる前の異形成の段階で見つけることが可能です。

一方で、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよい癌と言われていますが、進行すると治療が難しいことから早期発見がとても重要です。

健康な人生を長く生きるためにも、まだ若いからと思わずに20歳代から子宮頸癌検診を受けましょう。

検診の流れ

子宮頸癌検診は、婦人科で以下の流れで進んでいきます。

Step1:問診・視診・細胞診

  • 問診では、配布される問診票に情報を記載していきます。内容は、月経周期や直近の月経の様子、生理痛の有無や月経血の量、妊娠歴、閉経年齢などです。これに加えて、医師からの直接の質問に答えます。
  • 視診では、膣鏡という器具を膣内に挿入して子宮頸部を観察します。おりものの状態や炎症の有無を医師が目視で確認します。
  • 細胞診では、ブラシやヘラなどで細胞を採取します。子宮頸部を優しくこする程度のため、ほとんど痛みは無く短時間で完了します。

ここで問題なければ終了ですが、異常な細胞が見つかるとStep2の精密検査を行いますが、癌と診断されるものはごく一部で、多くは異形成の段階です。細胞診で異常が見つかっても、癌と決まったわけではありません。

Step2:コルポスコープ診・細胞診

Step1で異常があった場合には、コルポスコープという拡大鏡を使用する「コルポスコープ診」を行います。

子宮頸部を拡大して「正常」「異常」「浸潤癌」「評価不能」などに分類し、疑わしい部分の組織を採取して、顕微鏡でさらに観察して子宮頸癌や異形成などの確定診断を行います。

ここで中度異形成までの段階であれば短期スパンでの経過観察を行い、高度異形成が発見された場合は、子宮頸部を円錐状に切除して癌がないことを確認するために組織診断を行います(円錐切除術)。もちろんこの段階で癌が発見された場合は、速やかに治療に移ることになります。

視診、細胞診を受ける事は恥ずかしいかもしれません。しかし、若い年代で子宮頸癌にかかる方は20年前に比べると2~3倍に増えているというデータもあります。自分も癌になるかもしれないという可能性を考えて、思い切って検診を受けてみてください。

やっぱりかかりたくない!予防するために大切なこと

先ほど、子宮頸癌は早期発見が重要とお話ししましたが、もちろんかからないに越したことはありません。

子宮頸癌も所詮は癌の一つですので「生活習慣病」です。毎日の習慣によって、リスクが高まることもあれば、軽減することもあります。

そこで、ここでは将来の自分の健康のために、今どんなことができるのかを少しご紹介します。

生活習慣を改善して免疫力を高めよう

実は現在、日本人の2人に1人が一生のうち一度は癌になるというデータがある程、癌は日本人にとって身近な病気です。

そのため、どのようにして予防するかというテーマは多くの人の関心を引くところです。

科学的根拠に根ざした癌予防ガイドライン「日本人のための癌予防法」によると「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」という5つの健康習慣を実践することで、自分自身の努力で、子宮頸癌を含む「癌」になる確率を低くしていくことが可能とのこと。

国立癌研究センターでは、40歳から69歳の男女、総計140,420 人を対象に、生活習慣と癌やほかの病気の罹患(りかん)についての追跡調査を実施しており、この5つの健康習慣を実践する人は0または1つ実践する人に比べ、男性で43%、女性で37%も癌になるリスクが低くなるというデータも示されています。

(引用:国立がん研究センター)

健康は一日にしてならず。将来の健康のために、まずは出来ることから実践していくことが大切です。

ワクチンの接種

実は、HPVには複数の型が存在し、このうち子宮頸癌の発生と関連が深いと言われるいくつかの型のHPV感染を予防するワクチンが接種できます。

その効果について厚生労働省では、

HPV ワクチンは新しいワクチンのため、癌そのものを予防する効果は現段階では証明されていない。しかし、HPV の感染や子宮頸部の異形成を予防する効果は確認されているため、最終的に子宮頸癌を予防できることが 期待される。(引用:厚生労働省)

との情報を示しています。

ワクチン接種と子宮頸癌回避がイコールではないようですが、発症の可能性が低下するだけでも接種する価値はあるのではないでしょうか。

ただ残念なことに、このワクチンは初めての性交渉前に接種することが推奨されていてるもの。9歳から接種が可能とはいうものの、ワクチンの存在を知ったとしても、時すでに遅し。。。そんなことが多いのも現実です。

お子さんがいらっしゃる方は、検討してみると良いかと思います。

早期発見が鍵!定期的な検査を!

子宮頸癌のことについて、少しお分かりいただけたでしょうか。

子宮頸癌は、進行すれば命を脅かす恐ろしい病気である一方、若い頃から定期的に検査をして、しっかり向き合うことによって予防や早期発見をすることができる、ある意味付き合いやすい病気かもしれません。

子宮頸癌検診は、各自治体や職場で受診の補助があるところも少なくありませんので、興味があれば直近で受診できる時期を調べてみるのをお勧めします。