女性が妊娠をすることはとてもおめでたいことです。新しい命を授かることは決して必然的なことではなく、運命ともいえるほど神秘的なもの。しかし、そんな素晴らしいことなのに女性が妊娠をしたときに悩ませる問題があります。それが「就業事情」。
現代では。育休・産休の休暇制度を取得する企業も増え続けていますが、一方で妊娠したことによって「退職」しなければならない背景もあります。こうした状況は女性を悩ませ、妊娠したら会社を「辞めるか」「働くか」の選択を迫られる結果となってしまうのです。
では、妊娠したら仕事をどうするのが良いのでしょうか。また、妊娠した女性が会社を復帰するか退職するかを選択する理由なども考えながら、妊娠した後のより良い就業事情をご紹介していきたいと思います。
妊娠をしたら「退職」か「職場復帰」か選べる
働く女性の妊娠が分かった段階で、今働いている就業場所と、今後のことについて相談することから始まります。しかし、いざ妊娠した時に考えるのが「産後、しっかりと働けるかどうか」ですよね?
実際に勤めている会社の職種や業態によって違いが生じることは間違いないですが、実際に妊娠した時に「退職」するか「職場復帰」するかをじっくり考えるべきです。
女性の就業継続の現状
厚生労働省が発表した「依然として難しい女性の就業継続」という資料。こちらでは、女性の職場復帰の困難さについてのデータが総計されています。
妊娠して産前・産後休暇並びに育児休暇を取得する女性を比較すると、実際出産したときの有職者は、その半年後に無職となっている人が全体の67.4%を占めている状態です。
つまり、育児休暇を取得できたとしても、復職した女性は半数以下という結果になっているのです。勤めている(労働契約者)女性の中では、出産して半年後の有職者率は全体の23.9%と3割にも満たしていないのが現状。
また、出産を機に退職した理由については、家事や育児を専念するために退職した人と、仕事を続けたくても両立するのが難しくて退職した人が最も多いことが分かります。理由の中には「解雇」または「退職勧奨」などの理由で退職をしたという人まで。
こうした理由から、妊娠しても退職をする女性が多いことがわかります。また、妊娠後の復帰が選択できないこともあるようですが、これは違法です。
「妊娠したから解雇」は違法ですについて紹介しています。…
妊娠したことを会社に報告したら退職勧奨されることも、退職は労働者の選択する権利があるため違法行為となります。解雇をしたり、退職勧奨することは、妊娠をきっかけとして行ってはいけないこととなり、「ハラスメント」認定をされます。
万が一、不当な対応をされたという場合には、お住まいの管轄にある労働基準監督署に相談に行くことをおすすめします。
妊娠が原因として”不当な退職”は違反行為になる
上記でご紹介した通り、妊娠が原因として不当な退職を“選択される”ことは違法行為です。労働者が“選ぶ”権利がある以上、たとえ妊娠したからといって退職しなければならないなんてことにはなりません。
「妊娠したから迷惑掛かるし…」と思う人もいます。だからといって、会社から「妊娠したからやめてもらう」といわれるのはあるまじき行為です。過去に、平成29年1月31日に妊娠がきっかけとなり退職を言い渡されたことで不服を申し立てた裁判の判決事例があります。
妊娠中の退職合意を無効とした最新裁判例について、労働問題専門の弁護士が解説します。この裁判例で争点となった妊娠中の解雇に…
「マタハラ(マタニティハラスメント)」と呼ばれるハラスメントの事例で、判決としては「妊娠中の退職合意は無効である」という判決が下りました。
この判決事例から、会社側より退職に至るまでの説明責任や情報開示がなかったことにより、退職ではなく「解雇」に値するという解釈として認定されています。こうした事例もあることから毅然とした対応をして、権利を主張しておくことが優位な妊娠後の相談となります。
妊娠をしたらまずやること
産休・育休の期間を会社と相談
妊娠したら、まずは就業している会社に妊娠を報告します。職場復帰を考えている場合には、今後の産後の復職プランについて話し合うことから始まります。
上記でもお伝えした通り、「退職」や「職場復帰」を決めるのは労働者の権利です。時短勤務や職場の転属など、産休や育休の間に細かく打ち合わせをしていきましょう。
妊娠してから「退職」をする場合
- 健康保険・確定申告・住民税などの手続きが必要
まず退職を選択する場合にやってほしいことは「健康保険の手続き」です。
主な手続きパターンは以下の3つ。
- 夫の健康保険に扶養家族として加入する手続きを取る
- 退職した勤務先の健康保険を任意継続する
- 国民保険に加入する
妊娠してからは産院に受診したり、出産後には子どもの予防接種や受診など、何かと病院続きになります。そのため、退職してからの健康保険をどうするかを決めておく必要があります。
夫の社会保険の扶養に入るのがオススメ
夫の扶養に入ることで控除を受けて減税になることもありお得。夫が国民保険に入っている場合も同じなので、こうしたパターンが最も多いと思います。
また、任意継続しなければいけない場合や、国民保険に入らなければならない場合には保険料金を一度比較してみて、どちらに加入するかを検討することをおすすめします。任意継続する場合には、今前支払っていた保険料が50%負担だったものが2倍に増えてしまうため、注意が必要です。
税金関係手続には注意
そして、退職をする退職月によっても「確定申告」「住民税」が関係してきます。確定申告の対象月は「1月1日から12月31日」までになり、退職月によっては退職までに頂いた給与を自分で確定申告しなければなりません。
確定申告はネットで取得し申請できるので、忙しい場合には郵送等で申告を済ませるのも良いでしょう。そして「住民税」に関しては、給与天引で納税している場合には注意が必要で、退職後の住民税が未払いとなるため、市県民税通知書がご自宅に届きます。
住民税は必ず納税しなければならないので、退職する際には住民税の納付があることを忘れずに貯蓄をしておきましょう。
手当金・給付金・失業保険の手続きから給付まで
妊娠して退職をした場合には、以下のお金がもらえます。
- 出産手当金
- 失業給付金
出産手当金は社会保険から支払われるお金のことです。しかし、この出産手当金を受け取るには条件があり、
- 退職日まで継続して1年間健康保険に加入していること
- 退職日が出産手当金の支給期間(産前42日~産後56日)
- 退職日当日に出勤していないこと
となっているので注意が必要です。
また、失業保険は退職者がもらえる給付金となり、失業後に求職の申し込みをしていると給付されるお金です。この失業給付金は出産後に再就職を望む場合のみ「特定理由離職者」として失業給付金の受給を最長3年間延長することができます。
退職後の家計の問題
退職後の家計の問題は、一緒に家計を支えていく夫や親族と相談することをおすすめします。育児に専念したいこと、家事に専念したいことを、退職をきっかけにじっくりと話してプランを考えていくことで、出産後の問題に万全な体制を整えることができます。
妊娠してから「職場復帰」をする場合
産休・育休の期間を会社と相談
妊娠したら、まずは就業している会社に妊娠を報告します。職場復帰を考えている場合には、今後の産後の復職プランについて話し合うことから始まります。
上記でもお伝えした通り、「退職」や「職場復帰」を決めるのは労働者の権利です。時短勤務や職場の転属など、産休や育休の間に細かく打ち合わせをしていきましょう。
育児休業給付金・社会保険の免除・出産手当金の手続き
妊娠してから休暇後に職場復帰をした場合、その間では以下のお金がもらえます。
- 出産手当金
- 育児休業給付金
- 「育児休業給付金」
出産手当金は退職と同様に支給されます。違うのは「育児休業給付金」が支給されること。育児休業給付金は、加入している雇用保険から支払われるお金です。育休開始から6か月は67%分、以降は50%分の支給額で、最長2年間取得できます。
育休中に保育園を探す
職場復帰のめどを立てるために必ずしなければいけないのが「保育園探し」です。職場復帰の話がまとまったとしても、出産後に子どもを預ける場所がなければ職場復帰はかないません。
そのため、産後1年と経っていない時期でも、およそ9月から11月の間で住んでいる地域において、翌年4月から入園するための入園手続きを始める自治体が多いです。その時期を必ずチェックし、入園できる手続きをしておきましょう。
また、早めに入園を希望したいという人は「途中入園」という、1か月ごとに在園時の空きがあった場合に途中入園ができるシステムもあります。早めの職場復帰を目指すなら、途中入園も併用して考えてみてはいかがでしょうか。
妊娠の「退職」と「職場復帰」、どちらが良いかを比較
ここまで妊娠した時の「退職」と「職場復帰」についてまとめましたが、実際にどちらが良いのかを比較してみましょう。ここからは3つの観点に絞って、どちらが良いかを比較して紹介してみます。
経済面について
支給される手当を考えると、「失業給付金」と「育児休業給付金」を比較しがちですが、退職をしても職場復帰をしても、給付される金額や年数はだいたい同じです。経済面を踏まえて考えると、「時短勤務」ができれば「職場復帰」ができることが優位に立ちます。
退職をすることで、新しい職場を探さなければいけないのに対し、職場復帰で就業先が認めている期間で時短勤務が可能でかつ、ある程度の年齢に子どもが成長したら完全に復職ができるというシステムもあります。
また、第二子・第三子と出産する予定がある人は、一定期間で休業を取り、時短勤務を長めて勤め続けることができるので、途切れない給与面を考えるなら「職場復帰」がおすすめです。
子育て・育児について
子育てと育児に専念できる環境で言えば「退職」をした方が優位に立ちます。退職後に専業主婦になり子育てに向き合う時間をたくさん作ることができます。
こうした時間を就業している女性は取りづらいというのも現状で、退職後に空いた時間で子どもの習い事などの時間として費やすことも可能です。
家計・家族環境について
家計的な問題としては、個々によって違いますが、経済面にとっては「職場復帰」、どちらかが残業の多い就業形態又は不規則勤務であれば「退職」といったケースが推奨されます。しかし、各ご家庭において「他の家庭」とは違うことを踏まえると、退職か職場復帰化は「パートナー次第」となります。
まとめ
「妊娠」したからといって「退職」も「職場復帰」も“選ばされる”のではなく“選ぶもの”としてとらえてください。様々なハラスメント事情がありますが、各ハラスメントは「違法行為」です。
決して屈せず、妊娠したからといって迷惑だと決して思うことなく、「自分がどうしたいか」をしっかりと持ち、「退職」するか「職場復帰」するかを慎重に選んでいきましょう。