赤ちゃんが生まれて幸せいっぱいなはずなのに、なぜか悲しい気持ちになってしまう。 赤ちゃんがかわいく思えず、家事や育児がうまくいかなくてイライラする…。
こんな症状が出たら「産後鬱」の可能性があることは、ご存知でしょうか?
現在では、妊娠中や産後に病院で説明をされることも増えてきましたが、周囲に理解されず、つらい思いをしている方も多い病気です。
この記事では産後鬱について、原因や対処法などの基本的な情報をご紹介しています。
今、産後鬱で苦しんでいる方やそのご家族だけでなく、これから妊娠出産の予定がある方にも、知っておいてほしい内容をまとめました。 ぜひ参考にしてくださいね。
産後鬱ってなに?
産後鬱は鬱病の一種。 鬱病は大きな環境の変化によって起こることが多く、結婚や出産、昇進といった、一般的には幸せなイベントのときでも、それが引き金になって発症してしまうことがあるのです。
特に産後鬱は、軽いものも含めると、産後の女性の1~2割に見られるという調査結果もあるほど。 実はとてもたくさんのママたちが悩んでいる病気なんですね。
産後鬱は、出産で乱れた体調がやや落ち着いてくる産後1週間から増加しはじめ、産後1ヵ月くらいで最も多くなります。 その後も産後3ヵ月程度までは発症する可能性が高くなっていますので、引き続き注意が必要です。
また、産後鬱はどの出産の際にも起こる可能性があり、「初めての出産時には問題なかったのに、二人目の出産で産後鬱になった」というパターンも。
特に、まだ一人目が手を離れていない状態で二人目を出産したなど、ママの負担が大きくなる場合は、初産よりも発症の可能性が高くなる傾向があります。
産後鬱はどんな症状?
では、実際にどんな状態になったら産後鬱なのか、産後鬱はどのくらいの期間続くものなのか、詳しく見てみましょう。
産後鬱はこんな症状
代表的な産後鬱の症状は、以下のようなものが挙げられます。
- 理由もなく悲しい気持ちになって、頻繁に涙が出てしまう
- やる気が起こらない
- 眠れない
- ちょっとしたことでイライラしたり、すぐに怒ったりしてしまう
- 赤ちゃんがかわいいと思えない
このような症状が2週間以上続くようであれば、産後鬱を疑いましょう。
他にも、気分が変わりやすくなる、疲労感や不安感が増える、集中力がなくなる、ふだんしていることの手順が分からなくなるなど、症状は人によってさまざま。 頭痛や吐き気など、身体的な症状があらわれる人もいます。
このとき、産後鬱かどうかを判断する目安になるのが「赤ちゃんに対する気持ち」です。
- 赤ちゃんに対してイライラしてしまう
- 赤ちゃんのことで悲しくなり、泣いてしまう
- 赤ちゃんのためにしなければいけないことがあるのに、できない
- 赤ちゃんや自分を傷つけたくなる
こういった気持ちが続く場合は、産後鬱の可能性が高くなります。
産後鬱はいつまで続く?
産後鬱になってから症状が治まるまでの期間は、人によって大きく変わります。
どんな症状が出ているのか、どんな環境なのかなどによっても変わりますが、数週間で治ることもあれば、つらい状態が1年以上続く場合も。
ですが、早い段階で適切な治療を受け、できる限り心身ともに負担の少ない生活をすることで、早期に病状を落ち着かせることができます。
少しでもおかしいと思ったら、はやめに病院で相談するようにしましょう。
産後鬱の時、脳内はこうなっている!
現在、産後鬱がどういうメカニズムで起きるのか、はっきりとは分かっていません。
ですが最近の研究で、産後鬱の発症には女性ホルモンと脳内の神経伝達物質が関わっている可能性が高いという結果が出ています。
妊娠すると、体内では女性ホルモンが大量に分泌され、胎盤を育てたり、子宮内膜を作ったりして、出産の準備を始めます。
これらの女性ホルモンの分泌は出産時がピーク。 出産の数時間後には激減してしまいます。
おばあさんと変わらない量になると言われることもあるほどですので、その落差がよく分かりますよね。
このとき、いくつかある女性ホルモンの中でも、体と心に大きく影響を与えるのが「エストロゲン」。 エストロゲンは「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内の神経伝達物質「セロトニン」の分泌に深く関わっています。
セロトニンは気持ちを安定させ、リラックスさせる効果のある物質。 不足すると、鬱病やストレス障害などの心の病気の原因になることがありますが、エストロゲンが減少すると、同時にセロトニンの分泌量も減ってしまうのです。
つまり、妊娠中に分泌されたエストロゲンが、出産を機に急激に減少することで、セロトニンの働きが悪くなり、心身の不調が出やすくなってしまうということなんですね。
このため、出産後はただでさえ心や体のバランスを崩しやすい状態。 特に産後鬱になっているときの脳の中は、精神を安定させるための機能が極端に低下してしまっている可能性が高いと言えるのです。
産後鬱になったときの解決方法
このように、出産した女性なら誰でもかかる可能性のある、つらい産後鬱。 自分や家族が産後鬱になってしまったときは、どう対処したらいいのでしょうか。
以下のような点を参考にしてみてくださいね。
産後鬱かもしれないと思ったら
産後鬱に限らず、自分では症状に気づかないことが多いのが、鬱病の怖いところです。
悲しい気持ちになる、イライラする、やる気が出ないなどの症状が2週間以上続くようなら、「たいしたことない」などと軽く考えず、すぐにお医者さんに相談しましょう。
精神科や心療内科が最適ですが、産婦人科でも構いません。 早い段階で適切な治療をすることで、症状がひどくなるのを抑えることができ、その後の回復も早くなります。
生活をする上では以下が効果的です。
- 外で散歩をするなど、太陽の光を浴びるようにする (太陽光はセロトニンを活性化させます)
- 完璧にやろうとせず、休めるときは積極的に休む
- パパや実家など、頼れるところがあればなるべく頼る
- 自分の好きなことをする時間を持つ
心身ともにがんばりすぎないように心がけることが、何よりの治療になります。
産後鬱のママたちの中は、「こんなこともできないなんて」、「みんなはちゃんとしているのに」、「早く良くならなきゃ」と自分を責めてしまう人もたくさんいます。
ですが、産後鬱は病気のひとつ。 けっして産後鬱にかかった方が悪いわけではありません。難しいことですが、「できないことはやらなくていい」と、なるべく楽に考えるようにして、生活してみてくださいね。
家族が産後鬱になったら
出産は、女性にとって人生の一大イベントですが、それだけに、体と心にとても大きな負担がかかります。
ホルモンバランスや環境の変化、出産時の体へのダメージなどによる心身の不調は、起こって当たり前。
「甘えている」、「努力が足りない」、「みんなできているのに」などの心ない発言でママを傷つけるのは、もってのほかです。
産後鬱は病気であり、いちばんつらいのは産後鬱になってしまったママだということを、まず理解しましょう。
産後鬱になった方の家族が気をつけなくてはならないのは以下のようなものが挙げられます。
- 母乳をあげる以外の家事や育児は、ママでなく家族が行うようにする
- がんばらせたり、励まそうとしたりしない
- ママの話をしっかり聞いて、受け止める
- 病院にかかっている場合は、きちんと薬を飲ませる
- 地域のサービスやベビーシッターを利用するなど、ママが心置きなく育児から離れられる時間を定期的に作る
産後鬱になると、家事や育児はもちろん、自分の身だしなみや食事など、日常のささいなことにまで気持ちが行き届かなくなることもあります。
普段どおりの行動ができないことを責めたり、焦らせたりせず、なるべくママが楽になるようにサポートをしましょう。
まとめ
お笑いコンビ「クワバタオハラ」の小原正子さんが、出産後に産後鬱の症状が出ていたことを公表して話題になりましたが、現在、産後鬱に関しては、残念ながら一般に理解されているとはいいがたい状態です。
一方で、2018年の5月には、国立成育医療研究センターが、「出産後1年未満に死亡した女性について分析したところ、自殺が最も多かった」という衝撃的な研究結果を発表しています。
このことについては、産後鬱の影響が大きいとみる専門家も多く、今後は産後鬱への対策がますます大きな課題となるでしょう。
できれば妊娠中から、産後鬱になる可能性があることを家族と話し合っておいたり、信頼できる預け先を探しておいたりなどの準備をしておきたいもの。
もし発症してしまったら、すみやかにお医者さんの指示のもと、治療をするようにしましょう。