慣れない育児でストレスがたまり、眠りたいのに眠れない…と、不眠の症状に悩まされているお母さんがとても増えています。「育児が落ち着けば治るだろう」と楽観視してしまうのは、とても危険です。
産後うつなど、重大な病気が隠されていることもあるのです。ここでは産後うつの症状や、不眠になってしまったらどうしたらいいか、また精神科の受診の仕方についてまとめていきたいと思います。
不眠症とはどんなもの?
睡眠は最高のセルフメンテナンスともいわれており、人間は睡眠中に全身の細胞を修復しています。不眠症になると細胞の修復ができなくなり、さまざまな病気を引き起こすのです。
身体だけではなく、心の病気も不眠症と大きくかかわっています。不眠症という名前は聞いたことはあっても、詳しく知らない人が多いのでは。まずは不眠症のことを知ることからはじめていきましょう。
不眠症とは
眠りたい意思があるにもかかわらず、眠ることができないことをいいます。眠ってもすぐに目を覚ましてしまうのも不眠症のひとつです。国民の20%が悩んでいるともいわれています。
不眠症の主な原因
- 1 身体的疾患に伴うもの
中枢神経疾患、循環器疾患、呼吸器疾患など - 2 生理的学不眠
時差ボケ、交代勤務、短期間の入院など - 3 心理学的不眠
精神的ストレス、喪失体験、恐怖体験など - 4 精神疾患に伴うもの
うつ病、総合失調症など - 5 薬理学的不眠
アルコール、向精神薬、降圧薬など
ストレスや心の病気、生活リズムの乱れから起こることが多いようです。
育児中に不眠を引き起こす原因
育児中の睡眠不足に悩む人は多いものです。昼夜関係なく泣き続ける赤ちゃんに「ゆっくり眠れない」「寝てもすぐに起こされてしまう」と頭をかかえているお母さんも多いかと思います。
しかしそれとは別に「寝たくても眠れない」「疲れているのに眠れない」と不眠で悩むお母さんがここ数年でとても増えているのです。
マタニティブルー
マタニティブルーというと妊娠中だけかと思われがちですが、実は産後も大きく関係しているのです。主にホルモンバランスの乱れから起こるといわれています。悲しい気持ちになったり、眠れなくなったりと不眠の症状も含まれます。
<主な症状>
- 特に理由もなく気分が落ち込む
- 漠然とした不安感に襲われる
- 急に涙が出たり泣き出したりしてしまう
- 些細な事でイライラしたり起こってしまう。
- 倦怠感がありすぐに疲れてしまう。
- なかなか寝付けなくなり、眠りも浅くなった。
- 出産や育児に対する自信が全く持てず不安でたまらない
- 食欲が出ない
人によって差があるため当てはまる症状はそれぞれですが、こうした症状が複数出ることが多いです。しかし症状は一過性で、大半は3週間以内に治まります。
産後うつ
マタニティブルーの症状に加え以下の症状もある場合は産後うつとなっているケースが多いです。
- 子供のお世話を苦痛に感じる
- 夫に怒りを感じたり、愛情がなくなったりする
- 頭痛、吐き気、下痢、便秘、胃痛、腹痛などの症状がある
- 性欲や睡眠欲がなくなる
- 死にたいと思うことがある
上記のような症状が短くても1ヶ月程度、長くて1~2年続くといわれています。
育児不眠になりやすい人
育児中に不眠になりやすい人はどのような特徴があるのでしょうか?つい頑張りすぎてしまう人、不安になりやすい人など、ストレスを受けやすい人に多いようです。
「一人目のときは大丈夫だったのに二人目のとき不眠になった」など、個人の性格だけではなく、まわりの環境などが影響していることもあるでしょう。どんな人がなりやすいのか、自分が当てはまるかどうかチェックしてみましょう。
まじめで完璧主義な人
完璧主義で責任感の強い人は、育児がうまくいかないと感じると「なんでできないのだろう」と自分を責める傾向にあります。
周囲に頼れる人がいない、ワンオペ育児の人
育児を協力してくれる相手、相談できる理解者がいないとストレスがたまります。またなにかあった時は自分ひとりで解決しないといけないので、常に不安な気持ちに。
相談するのが苦手な人
何でも自分で解決しようとする。人に相談するのが苦手。そういうひとは知らず知らずのうちにため込んでしまうこともあります。ストレスが溜まっていることにすら気づいていないひとも。
育児中に不眠で悩んだら
育児中に不眠で悩む事はとても辛いものです。ただでさえ育児や家事で睡眠時間が短い中、少ない時間ですら眠ることができない…。疲れもたまり、気持ちも落ち込んでしまいます。
育児中はなかなか自分のことに目を向けることができず、後回しになりがちです。不眠も「いつかは眠れるようになるだろう」と放っておくのではなく、まずは自分ができることからはじめてみましょう。
不安をなくす
眠れないかも…眠らなきゃという不安が不眠の一番の原因といわれています。眠れなくてもいいやという気楽な気持ちをもつことが大切。
毎日同じ時間に起き、太陽の光を浴びる
体内時計のリズムは1日25時間で刻まれているため、太陽の光を浴びることで体内時計が整い快眠につながります。
夕方以降はカフェインを控える
カフェインには脳を刺激する覚醒作用があります。摂取後5~6時間は作用するので、夕方以降は控えるようにしましょう。
夜は強い光を避ける
睡眠は光の影響を強くうけます。少なくとも寝る2時間前からは部屋の電気を暗めにしたり、スマホやパソコンの画面を見ることは避けましょう。
改善しない場合、迷わず精神科へ行く
育児中の不眠にはマタニティブルーや産後うつの可能性があります。妊娠中から産後1年未満の女性の死亡原因で一番多いのが「自殺」でした。不眠がからだや精神に影響する力は大きく、不眠くらいで…と軽く考えず迷わず精神科へ行くことをお勧めします。
「精神科に行くなんて恥ずかしい」「周りになんて言われるか…」と感じるのならば、それも完璧主義の弊害かもしれません。病院で悩みを話すだけでもスッキリしますし、精神科の先生はその道のプロなので安心して任せられます。
治療といっても薬物療法だけではなくカウンセリング等の方法によっても症状を改善することは可能です。
精神科ってどんなところ?
精神科(精神神経科ともいいます)は、心の症状扱う診療科です。不安やイライラ・落ち込みなどの気分症状、幻聴や幻覚などの精神症状、そして眠れないなどの睡眠症状も精神科の対象になります。
「精神科ってどんな感じなんだろう」と、不安を抱いてしまう方は多いもの。実際に気持ちが落ちてしまうと、未知の世界に対しての不安感は強くなるものです。症状がひどくなる前に、勇気を出して精神科へ足を運んでみましょう。
ひとりで抱え込まずに
たかが不眠と軽く考えるのは危険です。産後うつなどの病気が隠れていることもあります。「うつ」は立派な病気です。放置すると進みますし、治療すれば改善します。
自分だけで解決しようとせずに、精神科で診てもらうことも大切です。大切な子どもを守っていくためにも、お母さんの健康が第一!元気な身体と心で、育児を楽しんでいきましょう。