不妊症に悩む現代人!専門家が原因や治療法について解説

内閣府の発表によると、日本の年間出生数は2016年に97万人と統計開始以来はじめて100万人をきり、依然として増加傾向には至らない。

令和の時代に入り、女性のキャリアアップも期待される社会となり、今後もさらに出生数は減少することに・・・

それに追い討ちをかけるように今、不妊症に悩む夫婦は多いのです。今回はその不妊症について解説したいと思います。

不妊症とは?

不妊症とは、夫婦が妊娠を希望して性生活を行っているにもかかわらず、1年間妊娠が成立しない状態のことを言います。

また、まったく妊娠していない状態は聞いたことあるかもしれませんが、今や過去に妊娠の経験があるにも関わらず、その後妊娠が成立しない「続発性不妊」というものもあります。

どのくらいの人が悩んでいるの?

一般的に不妊症に悩む夫婦は、およそ10組に1組と言われています。ただ、30代後半では30%ほど、40代になると60%と、不妊症は高齢になるほど頻度が高くなることが分かっています。

平均初婚年齢が50年前は24.7歳であったのに対し、現在は28.8歳と晩婚化が進んでいるため、不妊症で悩む人はどんどん増え続けてしまうかもしれません。

なんで不妊症になるの?

昭和の時代は風習として、子供がいない家庭は奥さんのせいにされがちでした。

ですが、今はしっかりと、不妊症は女性が原因の場合もあれば男性が原因の場合もあり、その割合は半々といわれています。

女性が原因の場合

①排卵因子

月経不順の女性にありがちなのが、月経のような出血はあるが、実は排卵していなかったというパターンです。

もちろん、排卵がないのであれば、妊娠が成立することはありません。女性ホルモンを分泌するシステムが異常であったり、ストレス、極端な体重減少や肥満などが考えられます。

さらに、男性ホルモンがたくさん分泌されてしまう病気(多嚢胞性卵巣症候群という)が原因の場合があります。

②卵管因子

卵管とは、受精が完了した卵子と精子が、子宮まで向かう道のことを言います。その管が詰まっていたり、狭くなっていたりすると妊娠が成立しません。

クラミジアに感染したことがある女性は、卵管の中で炎症が生じてしまい、狭くなってしまうことがあります。

また、子宮内膜症という病気がひどくなってしまうと腹腔内で癒着が起きてしまい、卵管が詰まってしまうこともあります。

③子宮因子

受精卵は卵管を通って子宮にたどりつきます。ですが、その子宮に異状があると妊娠が成立しません。

例えば、子宮の内側に炎症やポリープがあると受精卵がくっつきませんし、子宮筋腫と呼ばれる良性腫瘍がある場合も同じです。

その他、子宮の血流が悪い時や、手術後に癒着が生じていたことが原因の時もあります。

男性が原因の場合

①造精機能障害

精子の数が少なかったり、それこそ全くない(無精子症)ことがあります。また、精子の数はあっても、運動性が低いと妊娠は成立しにくいです。

さらに、精巣内の温度が高いと精子の数や運動性は低下します。なので、旦那さんが膝の上にノートパソコンを乗せて仕事をしていたら、絶対やめさせましょう。

②精路通過障害

精管と言われる、精巣で作られた精子がペニスの先端まで通る道があります。その精管が炎症などにより詰まっている場合があります。

そのため、たとえ射精ができたとしても精子自体は排出されていないため、妊娠が成立しません。

③性機能障害

勃起障害(ED)はこれに相当します。つまり、セックスで射精できない状態の場合です。

基本的には、ストレスや妊娠させなきゃというプレッシャーによる精神的なものが原因となります。

女性編、男性編と分けて紹介しましたが、どちらも共通している原因として、「加齢」は関わってきます。

やはり年をとると精子や卵子の質は低下するため、妊娠させる力はも弱くなってしまいます。

また、中には調べても全く原因の分からない、「原因不明不妊症」と呼ばれるものもあります。

どんな検査をするの?

不妊症は様々な原因により生じるので、特定するための検査項目はたくさんあります。今回は、どの因子が原因かをおおまかに特定する「スクリーニング検査」についていくつか紹介します。

①基礎体温測定

排卵が起きているかを簡便に調べる方法です。月経周期には、36.4℃程度の「低温相」と36.8℃程度の「高温相」に分かれており、排卵はその低温相から高温相へ移行する数日間に行われます。

ただ、家電量販店でも基礎体温測定計は売っているため、自分で検査可能な項目です。そのため、妊活中の人は欠かさず、自分で測定してチェックしておくことは必要かと思います。

②超音波検査

より詳しく排卵が起きているかを調べる方法です。直接卵巣や子宮の状態を確認することで、排卵の時期を予測することが出来ます。

さらには、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が原因か否かを検査することもできます。

③性交後試験

精子が子宮の中まで入っていけるかを調べる方法です。排卵の時期に性交を行い、24時間以内の頸管(いわゆる子宮の入り口)粘液中にいる精子の状態を観察します。

その時に、高速直線運動する精子がいなければ、精子が子宮の中に進入する力がないということなので、自然妊娠の可能性はかなり低いということになります。

他にも、ホルモン測定やクラミジア検査、精液検査など多くの検査方法があります。また、ある程度の原因が分かった後は、さらに内視鏡検査やMRI、染色体検査などの「二次検査」と呼ばれる詳細な検査方法もあります。

どんな治療法があるの?

何が原因となって不妊症になっているかによって治療法もさまざまですが、共通して言えることは、簡便な治療法から始まり、妊娠が成立するために、徐々に高度な治療法へとステップアップすることになっています。

今回も代表的な治療法をいくつか紹介します。

①タイミング指導

一番簡便な治療法です。いわゆる、検査結果に従って排卵を予測し、その期間に性交することにより妊娠成立の確立をあげる方法です。

自分で基礎体温を測定しておけば、ある程度自分で予測することも可能です。ただ、排卵にも精子にも異常がないことが前提となります。

②人工受精

男性のマスターベーションにより採取された精子を、排卵の時期に直接子宮内に注入する治療法です。

通常の性交では、数千万個いた精子の数は、卵子と出会う頃には数十個まで減っております。

そのため、精子自身の数が少なかったり運動性が低いことが原因の不妊症には特に有効な治療法と言えます。

さらに確立を上げたい時は、採取した精子の中から、粋の良い精子だけを集めて使用する、「精子調整法」という方法もあります。

③生殖補助医療

なじみのない言葉かもしれませんが、いわゆる「体外受精」や「顕微受精」の治療法のことを言います。

マスターベーションにより得られた精子と、超音波で確認しながら採取した卵子を、培養液中で受精させたり(体外受精)、顕微鏡で確認しながら直接卵子の中に精子を注入したり(顕微受精)する。

その後、女性の子宮内に受精卵を戻すことにより、妊娠の成立を目指すという方法です。

不妊治療でありがちな問題点

まずは費用です。不妊症の原因をたどる検査、妊娠成立を目指すための治療費は、想像以上にかかります。

特に、1回の治療で妊娠が成立するというわけではないので、自治体ごとに補助金は出るものの、治療回数とともにかかる費用は相当なものです。

さらには精神的ダメージです。妊娠に至らなかった時の女性側のショックは計り知れないです。

特に、道端やショッピングセンターで子連れの家族を見るだけでも辛く、結果的にうつ状態になってしまう女性もいます。

まとめ

今の時代、誰がなってもおかしくない病気、それが不妊症です。

「結婚して、子供産んで・・・」と簡単に言っていた時代が懐かしいと思うほどです。