近年、SNSの流通に伴い、InstagramやTwitter、WEARなどで様々な人のファッションを見ることができるようになりました。
実際に使用したり自分のコーディネートに取り入れたりしている方も多いのではないでしょうか?日本のみならず、世界中のファッションを気軽に見ることができる様になったことが大きいと思います。
今回は、私がヨーロッパのドイツに在住してファッションデザイナーとして働きながら感じた「ヨーロッパのファッション観」について述べていきます。実際に目にしたドイツ・ベルリンのファッションも写真付きで紹介致します。
「ファッションを楽しむ」その本当の意味とは?
「おしゃれ」と言っても、ジャンルの幅が広い分野ですし自分に似合うものが分からず迷走してしまう時期などもありますよね。
また年齢に相応しい格好やオフィス用の服を考えると「自分が着たい服」と「着なければならない服」のジレンマに悩まされる事も多いでしょう。
はじめに、今一度「おしゃれ」について考えてみませんか?
トレンドは作られたもの
「おしゃれな人」は往々にしてトレンド感があります。「古臭い・野暮ったい」という印象はありません。例え、レトロな雰囲気や古着テイストを取り入れていたとしてもです。
しかし、トレンドに対して安易に飛びつくことは注意しましょう。そもそもシーズン毎の「トレンド」というものは、ファッション業界やメディアによって意図的に生み出されたものです。
もちろん自然に生み出された「流行」もありますが基本的には売ることを目的として作られています。そのため、トレンドを追いかけているとシーズンごとに服を買い換えることになり出費がかさみます。服を多く持っている=「おしゃれ」ではありません。
また、当たり前ですが、流行っているものが必ずしも自分に似合うわけではありません。例えば、少し前に流行した「ワイドパンツ」。私自身、元々ワイド系のパンツを好んでおり、ウエストは細いけれど太ももは太いという自分の体型にも合っています。
しかし、これも前に流行った「オルチャンメイク」に関しては、どうしてもあの直線的な太眉が私の顔では浮いてしまい似合いませんでした。大切なことは、トレンドを意識はしても、全て取り入れる必要はないということです。業界が仕掛けた「売るため」に踊らされないようにしましょう。
おしゃれは選択の連続
服にしてもヘアスタイル、メイクにしても0から自分が生み出しているのではなく、あくまで私たちは「選ぶ」側です。作るのはデザイナーや美容師さんなどです。
つまり「おしゃれ」の根本的な行為は「選ぶ」という行為です。自分が、日々何を選ぶのか、何が欲しいのか、また本当は欲しいのではなく要らないのではないか、ということに向き合っている人こそ「おしゃれ」なのではないでしょうか。
スイスなど北欧のキッチン用品がおしゃれだと思う人は多いと思いますが、彼らは「おしゃれ」を意識しているというよりは「自分の生活に合ったもの」「簡単で直ぐに食べられるもの」を選んだ結果そうなっている、と言います。
媚びないファッション
お洒落なファッションをしたいと思っている人は、なぜそう思うのでしょうか。服には興味がなく着ていれば良い、という人もいます。それはそれで良いと思います。
しかし、その中でもなぜ「おしゃれを」したいと思うのでしょうか。そこには、やはり他人の目があると思います。自分に似合ったファッションをしている方は、男女問わず魅力的です。私もそのような人が大好きです。
しかし、あまりにも人におしゃれだと思われる事を意識しすぎていることは、おしゃれとはほど遠い気がします。おしゃれな人は意外と「おしゃれな服を着なくちゃ」と悩んでいないのではないでしょうか。
ネット雑誌で取りあげられるような、いわゆる「モテ服」「愛され◯◯服」ばかりを意識してしまうのは少し考えものです。
その「媚び」の感じが真のおしゃれだとは到底思えないのです。しかし、それでも私は人に愛されるファッションがしたい!トレンド大好き!で貫き通すのであればそれはもはや「媚び」ではないのかもしれませんね。
ヨーロッパ・ベルリンから学ぶ!媚びないファッション感って?
では、いよいよ本題に入っていきましょう。パリコレを中心としたヨーロッパのファッションカルチャーに憧れを抱く方も多いと思います。ここからは実際にヨーロッパ圏に住んでいる中で感じた「媚びないファッション観」をお伝えしたいと思います。
「若い・可愛い」に固執しない。
実は、ここが日本とヨーロッパの一番の違いだと思います。この違いに関しては、ファッション以外も通じる事です。正直なところ、日本の「若い・可愛い」好きはもはや異常です。実際に海外の友達にも日本の「若い・可愛い」について何度も質問を受けました。
街で道ゆく人の服を見ていると(ファッションショーやアートテキスタイル系は別)大人の女性でレースやフリル、パステルカラーやフェミニンなスカートを履いている人はほとんどいません。また、「前髪パッツン」の髪型を大人でしている人も見ません。
それらは総じて子供に象徴されるものだからです。要は日本の女性のように「若い・可愛い」と見られることを求めていないのです。
そこには「若い・可愛い」に対して価値をそこまで置いていないというヨーロッパの文化もあるでしょう。ある程度の年齢になれば「洗練」というものを目指します。
日本ではまだ、「女性は若く・可愛くあった方が良い」という価値観が残っているので日本の女性は少し大変ですね……。
ドイツ・ベルリンの女子高生はこのようなファッションをしています。日本の女子高生とは随分違います。もはやお洒落という言葉も合わない気がします。
選択の中から生まれる機能重視
前述した通り、要はおしゃれというのは「何を選ぶか」です。個人的にヨーロッパはこの「選ぶ」ということに関して非常にドライだと感じます。選ぶ時に使えるか、使えないか。
便利か、便利ではないかということに集中しています。要はデザインではなく「機能重視」の面が強いです。例えば、靴にしても道でヒールを履いている女性をほとんど見かけません。
ほとんどが、歩きやすいスニーカーやフラットブーツ。なぜならば、ヨーロッパのデコボコした石畳ではヒールでは歩きにくいからです。また冬になるとカシミアのニットにコート、ダウンジャケットに足元はドクターマーチンのブーツなどを身につけます。
首元は大判ストールでモコモコです。冬が極寒のヨーロッパではおしゃれよりも防寒が勝ちます。それでも何故か洗練されて見えるのは、全体的な色合いをシックにまとめているからでしょう。
ピンクなどのパステルカラーもほとんど見ませんし、足元の泥などが飛びますので汚れが目立たないようにしているのかもしれません。その代わり、パーティーなどでは、派手なメイクに胸元の空いた服など着こなしています。
機能重視で用途に合わせてファッションを選ぶということに関しては、日本よりも長けているように感じます。
年2回のファッションウイーク
余談ですが、ドイツ・ベルリンには年に2回「ファッションウィーク」というものが開催されます。この期間には街で多くのファッションショーやイベントが開かれます。
7月と1月にそれぞれ1週間開かれるのですが、1月のファッションウィークのイベントに足を運んでみました。多くの若手デザイナーが様々なコンセプトを元に自分たちの作品を展示しています。ここでは「非日常」でアートをして服を演出・創作していました。
「ファッション」という垣根を越え、サステナブルやジェンダーを取り入れたものもあり、格好良かったです。ハレでもケでも「洗練」されていてヨーロッパのファッションカルチャーは実に魅力的です。
ファッションは人生の一部。「衣食住」のうちの一つだからこそ良く考えてみよう。
今回は「ヨーロッパから学ぶ、媚びないファッション観。」とのことでしたがいかがでしたか?国が違えば文化も違います。
そこによる価値観ももちろん違うのでどちらが良い、ということではないのですが、少し参考にできる部分もあるのではないでしょうか。
特に自分のおしゃれに自信がなかったり、年齢的にファッションをどうしようか考えている方は、是非「媚びない」ということを意識してみたら良いかもしれませんね。
「衣食住」のうちの一つであるファッション。人生の一部なので、せっかくならば自分が楽しむことができる服を身につけたいものです。